リストカットの治療、皮膚移植術(植皮術)

「レーザーを何度やっても改善しない」「範囲が広すぎて切除できないと言われた」——そんな状況でも、植皮術であれば対応できる可能性があります。
本記事では、植皮術がどのような治療か、他の治療法との違いも含めてわかりやすく解説します。
こんにちは。ラジニアクリニックの院長、植木です。
本日はリストカットの傷跡治療のなかでも、植皮術について詳しく解説します。
目次
皮膚移植術(植皮術)とは
皮膚移植術(植皮術)とは、自分自身の別の部位から皮膚を採取し、傷跡の部位に移植する治療法です。レーザーや切除では対応が難しい広範囲・深い傷跡に対して、1回の手術で治療を完結させることができます。
リストカットの傷跡治療において植皮術は、他の治療法では限界がある場合の選択肢として位置づけられています。決して「最後の手段」というわけではありませんが、傷の状態によっては最初から植皮術をご提案することもあります。
他の治療法との比較——植皮術が選ばれる理由
当院ではリストカットの傷跡治療として、フラクショナルレーザー・切除法・アブレーション・植皮術の4つを用意しています。それぞれの特徴を整理すると、植皮術がどのような方に向いているかが見えてきます。
| 治療法 | 特徴 | 限界・注意点 |
| フラクショナルレーザー | 新たな傷を作らず徐々に改善 | 深い傷には効果が出にくい。複数回必要 |
| 切除法 | 傷跡を切り取り縫合。変化を実感しやすい | 一度に切除できる範囲に限界がある(約3cm幅) |
| アブレーション | 傷跡を火傷跡に置き換える | ダウンタイムが長く、術後1か月の自宅処置が必要 |
| 皮膚移植術(植皮術) | 別部位の皮膚を移植。広範囲に1回で対応 | 採取部位にも傷跡が残る |
切除法では「縫い閉じることができないサイズの傷跡」には対応できません。そうした広範囲の傷跡や、レーザーを繰り返しても改善が見られない深い傷跡に対して、植皮術は有力な選択肢となります。
それぞれの治療に関してより詳細を知りたい方は下記のページでご紹介しておりますので、ご覧ください。
リストカットの傷跡を消したい方へ治療法の比較と費用を紹介します。レーザー・切除・アブレーション・皮膚移植術(植皮術)を医師が比較|ラジニアクリニック
レーザー治療と切除法の違い・比較については下記でご紹介してみました。
リストカットの傷跡を目立たなくする方法(切除とレーザーの比較)|ラジニアクリニック
皮膚移植術(植皮術)の種類
植皮術は、移植する皮膚の厚さによっていくつかの種類に分けられます。
分層植皮(薄目・中間・厚目)
皮膚の表層部分のみを採取して移植する方法です。薄いほど生着しやすいというメリットがありますが、術後に収縮しやすく、仕上がりの質感がやや劣る場合があります。中間・厚目になるほど収縮が少なく、自然な仕上がりに近づきます。
全層植皮
皮膚の表層から深層まで、全層を採取して移植する方法です。術後の収縮が少なく、質感・見た目の自然さという点では最も優れています。ただし採取部位の縫合が必要になるため、採取できる範囲に制限があります。
特殊な方法(網状植皮・パッチ植皮)
非常に広範囲の傷跡に対しては、網状植皮やパッチ植皮といった特殊な方法を用いることもあります。ただしこれらは仕上がりの面でやや劣るため、通常は極めて広範囲のケースに限られます。
治療の流れ
カウンセリング
傷跡の範囲・深さ・状態を確認し、植皮術が適しているかどうかを診察します。採取部位についてもご説明します。
マーキング・麻酔
移植する部位と皮膚を採取する部位にマーキングを行い、局所麻酔をします。
手術(皮膚の採取と移植)
採取した皮膚を傷跡部位に移植します。移植した皮膚は一度血流が途絶えますが、移植部位との血流が再開することで生着します。
固定・アフターケア
生着するまでの約1週間、コットンガーゼなどを用いた特殊な固定を行います。皮膚のずれや血液の貯留、感染などを防ぐため、移植部を密着させた状態を保つことが重要です。
ダウンタイムと術後の経過
固定期間中(約1週間)は移植部位を水に濡らすことができません。この期間は日常生活での動作にも注意が必要です。
生着後は徐々に通常の生活に戻ることができますが、傷跡が安定するまでの約1年間は、日焼けや摩擦などの刺激を避け、紫外線対策をしっかり行うことが仕上がりに大きく影響します。
費用について
植皮術は保険適用外の自由診療です。費用は移植する範囲によって異なります。
| 施術内容 | 料金 |
| 分層植皮 10㎠以下 | 352,000円 |
| 分層植皮 10㎠以降(5㎠ごと) | 55,000円 |
| 全層植皮(上記に加算) | 330,000円 |
傷跡の範囲や状態によって、適切な植皮の種類と費用が変わります。まずはカウンセリングにて正確な見積もりをご案内しています。
よくある質問
皮膚を採取した部位にも傷跡が残りますか?
はい、採取部位にも傷跡は残ります。分層植皮の場合は擦り傷のような状態となるため、時間とともにほとんどわからない状態になる場合が多いです。全層植皮の場合は採取する場所を足の付け根など、日常生活で目立ちにくい部位を選びます。採取部位の傷跡についても、カウンセリングで丁寧にご説明します。
手術中の痛みはありますか?
局所麻酔を使用するため、手術中の痛みは最小限に抑えられます。麻酔が切れる術後2時間ほどから痛みが生じることがありますが、処方する痛み止めで対応できます。
仕上がりはどのくらいきれいになりますか?
植皮術はリストカットの傷跡を「完全に消す」治療ではありません。移植した皮膚の色調や質感が周囲と完全に一致するわけではありませんが、広範囲の傷跡をまとめて改善できる点で、他の治療法では難しいケースにも対応できます。仕上がりのイメージについては、カウンセリングで症例写真をご覧いただきながらご説明しています。
レーザーや切除と組み合わせることはできますか?
はい、可能です。例えば植皮術で広範囲の傷跡を処置した後、残った細かい傷跡にレーザーを追加するといった組み合わせも検討できます。一人ひとりの状態に合わせて治療計画をご提案します。
どのくらいの範囲から植皮術の対象になりますか?
明確な基準はありませんが、切除法で縫い閉じることができないサイズ、あるいはレーザーを繰り返しても十分な改善が見られないケースが目安です。カウンセリングで傷跡の状態を確認したうえでご案内しています。
おわりに
植皮術は、他の治療法では対応が難しい広範囲・深いリストカットの傷跡に対して、1回の手術で大きな改善を目指せる治療です。採取部位への影響など、踏み切るうえで気になる点もあると思います。私たちラジニアクリニックでは、メリットだけでなくリスクや限界についても丁寧にお伝えし、一人ひとりに合った治療をご提案しています。
傷跡のことで長年悩まれている方も、まずはお気軽にご相談ください。あなたの新しい一歩を、私たちは全力でサポートします。