リストカット跡は自分で消せる?セルフケアでできること・できないことを形成外科専門医が解説

監修:植木 健太郎
ラジニアクリニック 院長
日本形成外科学会 専門医
「リストカット跡を自分で少しでも薄くしたい」
「市販の傷跡クリームやテープを使えば消える?」
「昔の傷跡でもセルフケアを続ければ目立たなくなる?」
このようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。
リストカットによる傷跡は、時間の経過とともに赤みが落ち着いたり、周囲の皮膚になじんだりすることがあります。
一方で、白く残った線状の傷跡、凹凸、テカリ、幅の広がった傷跡などを、セルフケアだけで完全に元の皮膚へ戻すことは困難です。
ただし、「セルフケアをしても意味がない」ということではありません。
傷跡を紫外線や摩擦などの刺激から守ることや、状態に応じて保湿やシリコーン製剤を使用することは、傷跡をケアするうえで大切です。
また、現在の状態が、
- まだ治っていない「傷」
- 赤みや盛り上がりが残っている「治り途中の傷跡」
- 白っぽく落ち着いた「成熟した傷跡」
のどの段階なのかによっても、適切な対応は異なります。
この記事では、リストカット跡(自傷痕)について、セルフケアでできること・できないこと、医療機関へ相談した方がよい状態を形成外科専門医の立場から解説します。
目次
リストカット跡をセルフケアだけで完全に消すことは難しい
結論からお伝えすると、すでに形成されたリストカット跡を、クリームやテープなどのセルフケアだけで完全に元の皮膚へ戻すことは困難です。
皮膚が傷つくと、治癒する過程で瘢痕組織(はんこんそしき)が形成されます。
そのため、傷の深さや治り方によっては、
- 白い線として残る
- 傷跡の幅が広がる
- 周囲よりへこむ
- 盛り上がる
- 表面に光沢やテカリが出る
- 周囲の皮膚と質感が異なる
といった変化が残ることがあります。
このような変化は、皮膚の表面を保湿するだけで元の皮膚へ戻るものではありません。
一方で、傷跡は治った直後に完成するわけではなく、その後も時間をかけて色や硬さなどが変化します。
その期間に紫外線や摩擦などの刺激を避け、傷跡を適切に保護することには意味があります。
大切なのは、
「セルフケアで傷跡そのものを消すこと」と「傷跡を刺激から守り、良好な状態で経過させること」を分けて考えること
です。
すでに白く残った傷跡について医療による治療を検討したい方は、リストカット跡の治療法・費用をまとめたページをご覧ください。
まず「傷」と「傷跡」を分けて考えましょう
リストカット跡のセルフケアを考える前に、現在の状態が「傷」なのか「傷跡」なのかを確認することが重要です。
まだ傷が閉じていない状態
出血している、傷が開いている、浸出液が出ているといった場合は、傷跡のセルフケアを行う段階ではありません。
まずは傷そのものを適切に治療することが優先されます。
特に、
- 出血が止まりにくい
- 傷が深い
- 傷が大きく開いている
- 強い腫れや痛みがある
- 熱を持っている
- 膿が出ている
といった場合は、自己判断で傷跡用クリームやテープなどを使用せず、医療機関を受診してください。
傷がまだ閉じていない状態で、シリコーンシートやファンデーションテープなどを貼ることもおすすめしません。
赤みが残っている傷跡
傷が閉じたあとも、しばらくは赤色やピンク色に見えたり、やや硬く感じたりすることがあります。
傷跡はその後も時間をかけて成熟し、徐々に赤みや硬さが落ち着いていきます。
ただし、
- 赤みがなかなか引かない
- 徐々に盛り上がってきた
- 傷跡が硬い
- 強いかゆみがある
- 痛みがある
といった場合は、「治る途中だから」と決めつけず、傷跡の状態を確認した方がよいことがあります。
特に赤みに加えて盛り上がりや硬さがみられる場合は、肥厚性瘢痕やケロイドなどとの区別が重要です。
盛り上がっている傷跡
傷跡が赤く、硬く盛り上がっている場合には、肥厚性瘢痕などが考えられます。
また、元の傷ができた範囲を越えて盛り上がりが広がっている場合には、ケロイドとの鑑別が必要になることがあります。
このような傷跡は、白く平らになった成熟した傷跡とは治療の考え方が異なります。
「時間が経てば自然に白くなる」と長期間自己判断するのではなく、一度形成外科などで状態を確認することをおすすめします。
詳しくは、リスカ跡ケロイドの治療|赤みや盛り上がった傷跡は改善できる?で解説しています。
白く落ち着いた傷跡
赤みがなくなり、白っぽい線として残っている場合は、傷跡が成熟している可能性があります。
この段階になると、
- 白い色
- 傷跡の幅
- 凹凸
- テカリ
- 周囲との質感の違い
などをセルフケアだけで大きく変えることは難しくなります。
傷跡をさらに目立ちにくくしたい場合には、医療による傷跡治療を検討します。
リストカット跡に自分でできるセルフケア
傷が完全に閉じている場合には、傷跡をできるだけ刺激せずに経過させるために、自分でできるケアがあります。
ただし、セルフケアの目的は**「傷跡を完全に消すこと」ではありません。**
傷跡を刺激から守り、できるだけ良好な状態で経過させることが中心です。
紫外線から傷跡を守る
傷跡のケアで意識したいのが紫外線対策です。
傷が治ったばかりの皮膚は、紫外線の影響によって色素沈着を生じると、周囲の皮膚との色の差が目立つことがあります。
腕など日光に当たりやすい部位では、
- 日焼け止めを使用する
- 衣類で覆う
- アームカバーを使用する
- 強い紫外線を長時間浴びることを避ける
などの方法で保護しましょう。
日焼け止めだけではなく、衣類などによる物理的な遮光を組み合わせる方法もあります。
摩擦や刺激を避ける
傷跡を何度も強くこすったり、刺激したりする必要はありません。
特にまだ赤みが残っている時期には、
- 強くこする
- かきむしる
- 自己判断で強いマッサージを繰り返す
- 締め付けの強い衣類を当て続ける
といった刺激を避けましょう。
腕時計やアクセサリーなどが傷跡へ繰り返し当たる場合にも注意します。
傷が閉じたあとは乾燥を防ぐ
傷が完全に治ったあとは、乾燥を防ぐ目的で保湿剤を使用することがあります。
ただし、
保湿剤そのものに、白く残った線状の傷跡や凹凸を消す作用があるわけではありません。
保湿の目的は、乾燥や刺激を抑えて傷跡周囲の皮膚を良好な状態に保つことです。
市販されている「傷跡用クリーム」についても、それだけで深い傷跡が元の皮膚へ戻るわけではありません。
シリコーンジェル・シリコーンシート
傷が完全に閉じたあと、傷跡の状態によってはシリコーンジェルやシリコーンシートを使用することがあります。
シリコーン製剤は、特に肥厚性瘢痕やケロイドなどの予防・保存的治療で用いられている方法のひとつです。
ただし、
シリコーン製剤を使用すれば、すべてのリストカット跡が消えるというものではありません。
すでに白く成熟した傷跡や、深い凹凸、幅の広い線状の傷跡を大きく変えることには限界があります。
また、
- まだ開いている傷
- 出血している傷
- 浸出液が出ている傷
- 炎症が強い皮膚
などには自己判断で使用しないようにしてください。
テープやシートでかぶれ、赤み、かゆみなどが出た場合には使用を中止してください。
市販の傷跡クリームでリストカット跡は消える?
「傷跡用のクリームを毎日塗れば、白い線も消えますか?」
というご質問をいただくことがあります。
市販のクリームには、保湿などを目的としたさまざまな製品があります。
しかし、すでに形成された瘢痕組織を、クリームだけで元の正常な皮膚組織へ戻すことは困難です。
特に、
- 数年前から残っている白い傷跡
- 深い線状の傷跡
- 幅の広がった傷跡
- 凹凸
- テカリ
などについては、クリームだけで消すことを期待するのは難しいでしょう。
「長期間塗り続ければいつか完全に消える」と考えて、何年もセルフケアだけを続ける必要はありません。
傷跡が気になる場合には、現在の傷跡がセルフケアを続ける段階なのか、医療による傷跡治療を検討できる状態なのかを診察で確認することができます。
傷跡を一時的に目立ちにくくする方法
傷跡そのものを改善する治療ではなく、日常生活の中で一時的に目立ちにくくしたいという方もいらっしゃいます。
傷が完全に治っている場合には、次のような方法があります。
カバーメイク
傷跡と周囲の皮膚の色が異なる場合には、コンシーラーやカバーファンデーションなどによって色の差を目立ちにくくできることがあります。
ただし、凹凸や盛り上がりなど、皮膚表面の形状そのものを隠すことには限界があります。
傷跡カバー用テープ
肌色のテープやファンデーションテープなどを使用して、一時的に傷跡を覆う方法もあります。
特定の日だけ傷跡を見えにくくしたい場合には選択肢になります。
ただし、粘着剤によるかぶれや刺激が起こることがあるため、赤みやかゆみが出た場合には使用を中止してください。
衣類・アームカバー
衣類やアームカバーで傷跡を覆う方法もあります。
傷跡があるからといって、必ず医療治療を受けなければならないわけではありません。
治療を考える際には、傷跡の状態だけではなく、
「現在どの程度気になっているのか」
「どこまで目立ちにくくしたいのか」
というご本人の希望も重要です。
リストカット跡におすすめできない自己処置
傷跡を早く目立たなくしたいからといって、自分で皮膚を傷つけるような処置を行うことはおすすめできません。
特に、
- 自分で傷跡を削る
- 針などで傷跡を刺激する
- 強い薬剤を自己判断で使用する
- 高濃度のピーリング剤を傷跡へ使用する
- 傷跡を繰り返し強くこする
といった行為は避けてください。
新しい傷ができたり、感染、炎症、色素沈着、さらに目立つ傷跡につながったりする可能性があります。
医療機関で行う傷跡治療は、傷跡の深さや皮膚の状態を診察したうえで、適応やリスクを判断して行います。
同じことを自己処置で再現することはできません。
医療機関へ相談した方がよいリストカット跡
すべてのリストカット跡に医療治療が必要なわけではありません。
ただし、次のような状態であれば、一度形成外科などで傷跡の状態を確認することをおすすめします。
- 赤みが長く続いている
- 傷跡が盛り上がってきた
- 傷跡に硬さがある
- かゆみや痛みがある
- 白い線状の傷跡が多数残っている
- 幅の広い傷跡がある
- 凹凸やテカリが目立つ
- セルフケアを続けているが変化が乏しい
- 医療による傷跡治療について知りたい
特に、赤みや盛り上がりがある傷跡と、白く成熟した傷跡では治療の考え方が異なります。
セルフケアで改善しにくい傷跡には医療治療という選択肢もある
白く成熟したリストカット跡などに対しては、傷跡の状態に応じて、
- フラクショナルレーザー
- 切除法
- アブレーション
- 皮膚移植術(植皮術)
などを検討することがあります。
どの治療が適しているかは、
- 傷跡の幅
- 深さ
- 本数
- 傷跡がある範囲
- 凹凸
- 現在の色
- 盛り上がりの有無
などによって異なります。
このコラムではセルフケアを中心に解説しているため、それぞれの治療法については詳しく扱いません。
それぞれの治療法の特徴・適応・費用については、リストカットの傷跡治療|レーザー・切除・アブレーション・植皮の比較と費用で詳しく解説しています。
レーザー治療と切除法の違いを詳しく知りたい方は、リストカットの傷跡を目立たなくする方法|切除法とレーザー治療の比較も参考にしてください。
10年前・20年前のリストカット跡でも治療を検討できる?
「かなり昔のリストカット跡なので、今から治療しても意味がないのでは?」
と思われる方もいらっしゃいます。
傷跡治療では、単純に「何年前の傷跡か」だけで治療の適否を決めるわけではありません。
重要なのは現在の、
- 色
- 幅
- 深さ
- 凹凸
- 硬さ
- 本数
- 範囲
などです。
長期間経過した白い傷跡であっても、状態によっては治療を検討できる場合があります。
一方で、医療治療を行ったとしても、傷跡を完全に元の皮膚へ戻せるわけではありません。
「治療できるかどうか」だけではなく、現在の傷跡からどのような変化を目指すのかを考えることが重要です。
詳しくは、10年前のリストカット跡でも治療できる?傷跡を消すのではなく「目立たなくする」という考え方で解説しています。
よくある質問
リストカット跡は時間が経てば自然に消えますか?
傷が治ったあとの赤みなどは、時間の経過とともに徐々に落ち着くことがあります。
一方で、白い線状の傷跡、凹凸、テカリなど、瘢痕として残った変化が完全になくなるとは限りません。
現在の傷跡がまだ変化している途中なのか、すでに成熟しているのかによっても考え方が異なります。
傷跡用クリームを毎日塗れば消えますか?
保湿などのスキンケアには意味がありますが、すでに形成された深い瘢痕をクリームだけで元の皮膚へ戻すことは困難です。
特に白く成熟した線状の傷跡や凹凸については、セルフケアで変化させられる範囲には限界があります。
シリコーンテープはいつから使用できますか?
シリコーン製剤は、基本的に傷が閉じたあとの皮膚に使用します。
出血、浸出液、傷の開きなどが残っている状態では使用しません。
また、シリコーン製剤はすべてのリストカット跡を消すためのものではなく、特に肥厚性瘢痕やケロイドなどの保存的ケアで用いられる方法です。
傷跡の状態によって適応が異なるため、赤みや盛り上がりが強い場合には医療機関で確認することをおすすめします。
何年経った傷跡でも治療できますか?
古い傷跡という理由だけで、治療できないとは限りません。
治療の適否は経過した年数だけではなく、傷跡の幅・深さ・色・凹凸・本数・範囲などを確認して判断します。
10年以上経過したリストカット跡の治療についてはこちらをご覧ください。
赤い傷跡にはレーザーをした方がいいですか?
赤みがあるからといって、すべての傷跡にすぐレーザー治療を行うわけではありません。
赤みだけなのか、硬さや盛り上がりを伴っているのかなど、傷跡の状態を診察して治療方針を決めます。
肥厚性瘢痕やケロイドなどが疑われる場合には、まずそれらに対する治療を検討することがあります。
赤みとともに盛り上がりがある場合は、リスカ跡ケロイド・肥厚性瘢痕についての記事も参考にしてください。
まとめ|セルフケアでできること・できないことを分けて考えましょう
リストカット跡に対するセルフケアとしては、
- 紫外線から傷跡を守る
- 摩擦や刺激を避ける
- 傷が閉じたあとに乾燥を防ぐ
- 状態に応じてシリコーン製剤を使用する
- 必要に応じてカバーメイクやテープで一時的に目立ちにくくする
といった方法があります。
一方で、白く残った線状の傷跡、幅の広い傷跡、凹凸、テカリなどをセルフケアだけで完全に消すことは困難です。
また、
まだ傷が治っていない状態
赤みや盛り上がりがある状態
白く成熟した傷跡
では、それぞれ対応が異なります。
ラジニアクリニックでは、傷跡の色・幅・深さ・本数・範囲・凹凸などを診察したうえで、現在の状態やご希望に応じて治療方法を検討します。
セルフケアを続けるべき状態なのか、医療による傷跡治療を検討できる状態なのか分からない場合も、まずは現在の傷跡を診察で確認することが大切です。
この記事の監修医師
植木 健太郎
ラジニアクリニック 院長/日本形成外科学会 専門医
福岡大学医学部卒業後、福岡大学病院形成外科、神奈川県立こども医療センター形成外科、京都大学医学部附属病院形成外科などで形成外科診療に従事。
形成外科領域での診療経験をもとに、傷跡の状態や患者様のご希望を確認しながら治療方針をご提案しています。
参考文献
- Meaume S, et al. Management of scars: updated practical guidelines and use of silicones. European Journal of Dermatology. 2014.
- Monstrey S, et al. Updated scar management practical guidelines: non-invasive and invasive measures. Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery. 2014.
- Gold MH, et al. Updated international clinical recommendations on scar management. Dermatologic Surgery. 2014.
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。傷跡の状態や治療の適応には個人差があり、実際の治療方針は診察を行ったうえで個別に判断します。